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第 3

代数

代数式は数式演算の代表的なものです. 代数式は変数や定数を単独に,または,加減乗除や指数, ルートなどによって組合せた式で構成されます. その中でも加算,減算,乗算によって構成される 簡単な代数式を多項式と呼びます. 変数xによるn次元の多項式は次のように表記します.

anxn+an−1xn−1+· · ·+a1x+a0

ここでa0,a1,. . .,anは係数でan̸= 0とします.

計算コマンド以外(簡単化など)にも結果として同じ演算を行なうコマンドがあります. 多項式の積を展開する場合は,式にカーソルを配置して展開コマンドを選択します. または をクリックします.

◮ 展開

(3x2+ 3x−1) ( 8x2+ 7)

= 21x+ 13x2+ 24x3+ 24x4−7 次のようにexpand関数を使って計算することもできます.

◮ 計算 expand((

3x2+ 3x−1) (

8x2+ 7))

= 21x+ 13x2+ 24x3+ 24x4−7

数 式 モ ー ド で 関 数 名xpnd を 入 力 し ま す. 入 力 し た 数 式 モ ー ド の 文 字 は 自 動 置 換 に よ り 灰 色 で expandと表示されます.

自動置換される数式モードの文字はツール+自動置換のダイアログで確認できます.

一般的な円の方程式は平方和として与えられます. 部分計算(参照12ページ)の機能は多項式の演 算に便利です.

Example 3 円を表す式 x2−6x+ 18 +y2+ 10y= 0から中心と半径を求めてください. 両辺 から定数項18を引きます.

x2−6x+ 18 +y2+ 10y−18 = 0−18

左辺を選択し, ctrlキーを押しながら簡単化を選択します. 右辺についても同じ操作を行ない ます.

x2−6x+y2+ 10y=−18

xの項を選択し, をクリックします. 同じことをyの項についても行ないます. (x2−6x)

+(

y2+ 10y)

=−18.

xの係数の二分の一に相当する数の二乗を両辺に足します. 同じことをyについても行ないます. (

x2−6x+ (−6

2 )2)

+ (

y2+ 10y+ (10

2 )2)

=−18 + (−6

2 )2

+ (10

2 )2

項 (

x2−6x+(−6

2

)2)

を選択します.ctrl キーを押した状態で因数分解を選択します. 同じこ とをyについても行ないます.

(x−3)2+ (y+ 5)2=−18 + (−6

2 )2

+ (10

2 )2

方程式の右辺を選択し,ctrl キーを押した状態で簡単化を選択します. (x−3)2+ (y+ 5)2= 16

標準的な円の式に変形できました. 円の中心は(3,−5),半径は

16 = 4です.

3.1 多項式と有理式 51

3.1.2 総和記号

多項式の一般形は総和記号を使って次のように記述できます.

n

k=0

akxk=anxn+an−1xn−1+· · ·+a1x+a0

◮ 総和記号の右辺に多項式を入力する

1. アイコン をクリックします. または挿入+オペレータとしてパネルから を選 択します.

2. オペレータ

の右側にカーソルを配置して をクリックします. または,挿入+下付 き文字とします.

3. 入力ボックスにk= 0を入力します.

4. tabキー,または,スペースバーを押し, をクリックします. または,挿入+下付き文 字としてます.

5. 入力ボックスにnを入力します.

6. スペースバーか,または右矢印キーを押して通常の入力位置に戻りakxkと入力します.

◮ 計算

5

k=0akxk=a5x5+a4x4+a3x3+a2x2+a1x+a0

3.1.3 有理式の和と差

書換え+標準形式を選択すると展開された分子と最大公約数が1である分母を持つ有理式を返し ます.

◮ 有理式の和または差と公分母の組合せを求める

1. 数式モードで有理式を入力し,数式にカーソルを配置します. 1. 因数分解コマンドを選択し,書換え+有理式コマンドを選択します.

◮ 書換え+ 標準形式

3x2+3x

8x2+7 +2x5x2+x+72+3 =16x4+8x3+70x1 2+7x+49

(46x4+ 9x3+ 83x2+ 21x+ 21)

◮ 因数分解

3x2+3x

8x2+7 +2x5x2+x+72+3 =21x+83x(x+2x22+9x+7)(8x3+46x2+7)4+21

◮ 有理式公分母を求める

1. 数式モードで有理式を入力し,数式にカーソルを配置します. 2. 書換え+有理化コマンドを選択します.

または

簡 単 化コ マ ン ド か ア イ コ ン を ク リ ッ ク し ま す. ま た は 因 数 分 解コ マ ン ド を 選 択 し ます.

◮ 書換え+標準形式 (8x2+ 7)−1(

x+ 2x2+ 7)−1(

4x3−5) ( x2+x)

=−16x−4x4+8x5−4x3+70x4+5x2+7x+492+5x

◮ 書換え+有理式 (8x2+ 7)−1(

x+ 2x2+ 7)−1( 4x3−5)

= 4x3−5

(8x2+ 7) (x+ 2x2+ 7)

3.1.4 部分分数

部分分数コマンドは多項式と微積分のサブメニューにそれぞれ用意されています. このコマンドを 利用すると有理式を簡単な分数の和として表現できます. つまり,前節で行った操作と逆の処理を 行う訳です.

部分分数コマンドは有理式を分数和に変形します. 変換された各分数の分母はそれ以上分割できな い形で表現されます. つまり,各分数の分母の解や係数が無理数になってしまうところまで,分割 を行います.

結果として分子は定数か,または, 1次式になります. 部分分数の一般的な形を次に示します. A

(ax+b)n または

Ax+B (ax2+bx+c)m

数式に複数の変数が存在する場合,ダイアログで目的の変数を入力します. その他の変数は定数と して処理されます.

◮ 有理式を部分分数和に書き換える 1. 数式モードで有理式を入力します. 2. カーソルを式に配置します.

3. 多項式サブメニュー(または微積分サブニュー)から部分分数を選択します. 1. 多項式変数ダイアログボックスが表示されたら,変数を指定します.

◮ 多項式+部分分数

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(x−2)(x−1)2(x+1)2 =x−24(x−1)9 2(x+1)3 2x+14

x3+x2+1

x(x−1)(x2+x+1)(x2+1)3 =(x342x++1)342(x122x−+1)123+158x2x−+118 +8(x−1)1x2x+1+x+11x (変数:y) (x−y)y2(x+1)= (x−y)x2(x+1)(x−y)(x+1)1

部分分数では,小数点や浮動小数点形式の数値は利用できません. 係数は必ず整数や,整数の分数 で入力してください. 小数点形式の数値を分数に変換する場合は書換え+有理化コマンドを利用 します. 詳細は24ページを参照してください.

3.1 多項式と有理式 53

3.1.5 多項式の積と累乗

多項式の積や累乗計算を求める場合は展開コマンド(または をクリック)を利用します.

◮ 展開 (3x2+ 3x) (

8x2+ 7)

= 24x4+ 24x3+ 21x2+ 21x

数式モードで関数名xpndを入力します. 最後の文字を入力すると関数expandが表示されます. 次の例に示すように多項式をカッコ内に入力して計算コマンドを実行します.

◮ 計算 expand((

3x2+ 3x) (

8x2+ 7))

= 24x4+ 24x3+ 21x2+ 21x

3.1.6 多項式の除算

多項式の商を f(x)

g(x) からq(x) +r(x)

g(x)の形に変形することができます. ここでr(x)q(x)は多 項式でdegr(x)<degg(x)とします.

◮ 多項式の除算

1. 多項式の商を入力します. 2. カーソルを式に配置します.

3. 多項式サブメニューから,除算を選択します.

◮ 多項式+ 除算

3x5+3x3−4x2+5

8x2+7 =643x− 21648xx−2+7172 +38x312

Note このアルゴリズムは一般的に多項式の長除として知られています.

3.1.7 項の整理と並べ替え

同次数の項の演算を行ない,並べ替える場合は多項式メニューの並べ替えコマンドを選択します. 同次数の項の演算だけを行なう場合は,多項式メニューの項の整理を選択します. 変数が複数ある 場合は,基準となる変数をコマンド選択後に表示されるダイアログに入力します.

◮ 多項式 +並べ替え

x2+ 3x+ 5−3x3+ 5x2+ 4x3+ 13 + 2x4= 2x4+x3+ 6x2+ 3x+ 18 5t2+ 3xt2−16t5+y3−2xt2+ 9 =t2x+ 5t2−16t5+y3+ 9 (変数:x) 5t2+ 3xt2−16t5+y3−2xt2+ 9 =−16t5+xt2+ 5t2+y3+ 9 (変数: t)

◮ 多項式+項の整理

5t2+ 3xt2−16t5+y3−2xt2+ 9 =t2x+(

5t2−16t5+y3+ 9)

(変数: x) 5t2+ 3xt2−16t5+y3−2xt2+ 9 = (x+ 5)t2−16t5+(

y3+ 9)

(変数: t)

多項式の内容によって両方のコマンドを順番に実行することもあります.

◮ 多項式+項の整理,多項式+並べ替え

x3b+e+x2c+x2+x4k+x−x3d+a = kx4+ (b−d)x3+ (c+ 1)x2+x+ (a+e) = kx4+ (b−d)x3+ (c+ 1)x2+x+ (a+e)

(変数はx)

◮ 多項式+項の整理,多項式+並べ替え

x3b+e+x2c+x2 +x4k+x−x3d+a = kx4+x3(b−d) +x2(c+ 1) +x+a+e = kx4+ (b−d)x3+ (c+ 1)x2+x+ (a+e)

3.1.8 多項式の因数分解

多項式の因数分解は重要な演算機能の一つです.数式処理メニューに用意されている因数分解の機 能は非常に強力で,しかも便利です. 多項式を整数や有理数の解をもつ式に因数分解します. また, 展開した多項式の係数を使って因数分解することも可能です.

対象となる多項式に小数点形式の数値が存在すると因数分解は行なえません. 実際, 1.5という数 値は浮動小数点形式の値として解釈されますので,因数分解は実行されません. このような場合は, 一度,書換え+有理化のコマンドを使って,1.5 = 1510のように変形してから因数分解のコマンドを 実行します.

◮ 因数分解

5x5+ 5x4−10x3−10x2+ 5x+ 5 = 5 (x−1)2(x+ 1)3

1

16x275x+16ix−5615i=161 (

x+83i) ( x−1125 ) 120x3+ 20(

−3 + 2√ 3)

x252( 8√

3−3) x+52

3 = 120( x+13

3) ( x−14)2

因数分解の結果,各項には整数係数が付くように処理されます. 因数分解された多項式の解は上の 例からも分かるように,係数と大きく関係しています. 技術的な言い方をすれば,係数によって表 現される空間上に多項式は因数分解される訳です. すべての係数が有理数の時,多項式は有理解を 使って因数分解されます.

解を後から容易に見つけることのできる場合は,次の例のように適当な値を掛けることで,因数分 解を実行することもできます.

◮ 因数分解

5x2+x+ 3 =x+ 5x2+ 3 i√

59(

5x2+x+ 3)

=( 5i√

59) (

x−101i√

59 +101) (

x+101i√

59 +101)

因数分解のコマンドの代わりに数式モードで関数factorを入力して,カッコ内に多項式を入力し、

計算コ マ ン ド を 実行 す る 方 法 も あ り ま す. コマ ン ドexpand は 、数 式 モ ード でxpndと入 力 し ます.

◮ 計算 factor(

5x5+ 5x4−10x3−10x2+ 5x+ 5)

= 5 (x−1)2(x+ 1)3 expand(

5 (x−1)2(x+ 1)3)

= 5x5+ 5x4−10x3−10x2+ 5x+ 5

3.1 多項式と有理式 55

2乗の差の因数分解はもちろん, 3乗の和と差,さらに同じ指数を持つ2変数の差の因数分解も可 能です.

◮ 因数分解

x2−y2= (x−y) (x+y) x3−y3= (x−y)(

xy+x2+y2) x4−y4= (x−y) (x+y)(

x2+y2)

同じ奇数乗の数の和と差の式について因数分解することができます.

◮ 因数分解 x3+y3= (x+y)(

−xy+x2+y2) x5+y5= (x+y)(

−xy3−x3y+x2y2+x4+y4) x7+y7= (x+y)(

−xy5−x5y+x2y4−x3y3+x4y2+x6+y6)

3.1.9 2 つの多項式の最大公約数

2つの整数に対する最大公約数(参照21ページ)を求める方法と同じ方法で2つの多項式の最大 公約数を求めることができます.

◮ 2つ以上の多項式の最大公約数を求める

1. 数式モードでgcdと入力するか,または数式名のダイアログから選択します.

2. アイコン をクリックし,数式モードで多項式を入力します. この時,多項式はコンマ で区切ります.

◮ 計算

gcd(5x2−5x,10x−10) = 5x−5 gcd(

x2+ 3x+yx+ 3y, x2−4yx−5y2,3x2+ 2yx−y2)

=x+y 計算結果を確認する場合は,元の多項式を因数分解します.

◮ 因数分解

x2−4yx−5y2= (x−5y) (x+y) 3x2+ 2yx−y2= (3x−y) (x+y) 多項式の最小公倍数(参照21ページ)を求めることもできます.

◮ 2つ以上の多項式の最小公倍数を求める

1. 数式モードでlcmと入力します(灰色に変わります).

2. アイコン をクリックするか,または挿入+カッコとして目的の記号を選択します. たはctrl + 9を押します.

3. 入力ボックスに多項式を入力します.多項式の間はコンマで区切ります. 4. 計算コマンドを選択します.

◮ 計算

lcm(yx+ 3x−5y−15, xz−53x−5z+ 265) = 265y−159x−15z−53xy+ 3xz−5yz+xyz+

795

多項式の関係を明確にするために因数分解を行います.

◮ 因数分解

yx+ 3x−5y−15 = (y+ 3) (x−5) xz−53x−5z+ 265 = (z−53) (x−5) 265y−159x−15z−53xy+ 3xz−5yz+xyz+ 795 = (z−53) (y+ 3) (x−5)

3.1.10 多項式の解

変数にある値を代入したとき,多項式の値がゼロになったとすれば,その値を多項式の解と呼ぶこ とが で き ま す. つ ま り,多 項 式p(x) の 解 は,方 程 式p(x) = 0の解 と な り ま す. 例え ば, 1 , x2−1の解です. 多項式がx−rの累乗で表示できる場合,rを多項式の解と呼びます.

◮ 多項式の複素数解を求める

1. 多項式を入力し,カーソルを配置します. 2. 多項式サブメニューから複素数解を選択します.

◮ 多項式+複素数解 5x2+ 2x−3, roots:

[ −1

3 5

]

x2+ 1, roots:

[ −i i

]

x3135ix2−8x2+295ix+815x+ 6i−185, roots:

 3 5 + 3i

25i

書換え+直交座標コマンドを使って,これらの複素式を簡単化することができます.

◮ 書換え+直交座標 (5

2+1310i)

101

(336 + 850i) =25i(−1)

1 10

√(336 + 850i) +(5

2+1310i)

= 5 + 3i 設定を変更して,実数解のみを計算できます.

◮ 多項式の実数解を求める

1. 数式モードでassume(real)と入力します.

2. マウスカーソルをassume (real)に置き, 計算コマンドを選択します. 3. マウスカーソルを多項式に置きます.

4. 多項式サブメニューから複素数解を選択します.

◮ 計算

assume (real) =R

◮ 多項式+複素数解

x3135ix2−8x2+295ix+815x+ 6i−185, roots: 3